追突された春子さんの具合は、軽症だった。警察に行って、物損扱いで終わらせたとのこと。彰太は不安だったが、骨や体に詳しい春子さんが「平気よ」と言うんだから先ずは、ひと安心。
彰太の新しいクレジットカードはなんと二日間で受け取ることが出来た。カード会社に感謝。それから彰太は、カード払いの会社にアクセスして必死でカード番号変更の処理をした。そうしているうちに、台風20号は温帯低気圧に変わった。
夕方、春子さんが家に来る。これから初めて六日間という長期間を共にする。旅行は、初日の春子さんのエステがうまく行けば、「始めよければ終わりよし」となると彰太は期待していた。
翌日、春子さんと一緒に家を出て、羽田空港に到着。だんだん、旅行気分が高まる。コーヒーを飲みながら飛行機の離着陸を見る。大空に憧れた子供の時代の気分だ。
三時間で台湾の松山空港に到着。都心に近いのがメリットだが、桃園空港に比べるとローカルな空港だ。ホテルまでは旅行会社のバスですぐだった。夕方、ホテル近くの小籠包の店を探す。京鼎楼という店だ。歩いて10分もかからないところに店はあった。ここは空いている。さすが春子さんパワー。早速、色々と頼む。小籠包のそれぞれに春子さんが「美味しい」と言う。それを聞いて彰太も嬉しくなる。ビールも適当に選んだが、これがたまたま「18日間だけの生ビール」。スッキリしていてとても美味しい。幸先がいい。春子さんのエステが8時からなので、7時過ぎには店を出た。
春子さんがエステから戻ってきた。にこやかな顔だ。「肌がスベスベ」と腕をさすっている。彰太も嬉しかった。春子さんには、好きなだけエステを受けてもらいたい。
翌日、ホテルのすごい朝食を目の前にしながら、忙しなく食べて、バスに乗り込む。龍山寺に着く。日本のお寺と違って全体的に賑やかで、お経も軽やかだから、湿っぽいどころか明るい感じ。先ずは居並ぶ仏様にご挨拶。信仰心の薄い彰太だけど、こういう雰囲気は好きだ。境内は地元の人や観光客で混んでいるので、引っ込み思案の彰太は御神籤を引くつもりはなかったが、蛮勇を奮って御神籤引きに参加する(本当は、是非とも引いてみたかったのだが)。ポエという三角形のようなものを投げてから御神籤を引く。春子さんはなかなか手間取っていたみたいだが、彰太はすぐに御神籤を引くことができた。信仰心の薄い彰太にも拘わらず、御神籤は「上上」という、日本でいう大吉を引いた。「僕がラッキーということは、春子さんもラッキーっていうことだ」